東地中海からエーゲ海へ:2013年夏「鬼っ子丸グループ」のトルコ巡航
1970年卒 大野拓司
エーゲ海の「碧さ」をどう表現したらいいだろうか。「透き通るような」といった形容ではモノ足りない。それは、あたかも「あお」の色素が水中に凝縮されて溶け込んでいるかのようである。すくってペットボトルにでも入れれば、「あお」がそのままボトルに閉じ込められて「トルコ石」の塊ができるのではという気にさえしてくる。すごく綺麗だ。
この一帯は、陸地だけでなく海底にまで白い大理石の岩盤がのびているからで、そこに降りそそぐ太陽の紫外線が反射して、あの魅惑的な碧い海が出現するのだという。「地中海の不思議」を解説する本に、そう書いてあった。そうしたら、理系の友人いわく、「ああ、あれね。地中海は碧いけど、いわば『海の砂漠』なの。周りが岩だらけの禿山が多くて、海にはプランクトンが少ないから魚があまりいないし、海草も育たない。だから日本の海のように磯臭さがしなかっただろう?」と。
確かに、そうかもしれないけど、なんだか身も蓋もない言い種じゃあないか。
やっぱり行ってよかった。船、海、風、波。そして文明興亡の歴史・・・。ぼくたち「鬼っ子丸グループ」をコアにした6人は、この夏(2013年8月)、トルコ南西部の東地中海・エーゲ海でのクルージングを堪能してきた。加えて、古代ギリシャの遺跡が残るクシャダス周辺やアジアとヨーロッパをつなぐ都イスタンブールなど陸上観光の魅力もたっぷり楽しめた2週間だった。ヨットはこれまでと同様にチャーターで、世界各地に拠点を持つSunsailを使った。43ftだった.
このクラスだと、チャーター料はベアーで1週間が約50万円。クルーは、各自の負担を考えれば最低5人はいたほうがいいし、船内での寝泊りも含めた居住性を考慮すれば7、8人までなら問題なさそう。今回のメンバーは、シュウチョウ北川(1968年卒)、伊藤英二(70年卒)、樫田善太郎(同)、大野拓司(同)、ブッシュ吉川(72年卒)、アントニウス和田(77年卒)。もともとは、計画段階から熱心だったチンパン服部(68年卒)も加わっての計7人のはずであったが、成田出発の直前に体調を崩してしまい、断念。しかし、「後方支援隊長」を自任して東京でサポートに回ってくれたのは心強かった。
あれを食いたい、これも食いたい。そこに行きたい、あそこにも。そうこうしているうちに体力は衰え、気力も萎え、おまけに財布まで細ってしまうのが人の世の常とか。であるなら、できる時にまずは踏み出してみよう。というわけで、鬼っ子丸グループは、これまでに南太平洋のニューカレドニア(1998年)やタヒチ(2007年)を皮切りに、アンダマン海へとつづくマラッカ海峡北端に近いマレーシア・ランカウィ(2009年)、さらに2011年からは舞台を地中海へと舵をきり、ギリシャのイオニア海、翌年はイタリア・ティレニア海、今回の東地中海・エーゲ海クルージングとなった。ヨットは現地でチャーターする。途中からの参加も離脱も自由。無理はしない。この三原則でやってきた。小生(大野)はランカウィとトルコに参加しただけだが、事故もなく楽しく乗り切れたのは仲間たちによる下調べ、交渉、手配、臨機応変な対応が支えていたからにほかならない。
海あればこそ、ヨットあればこそ、そして何よりも仲間あればこそのクルージング・ライフだ。そのことを改めてかみしめたトルコの旅であった。
で、来年は? 「マヨルカ島を目指そう」という話が持ち上がっている。地中海の魅力に憑りつかれたら、なかなか抜け出せないのだと言われているらしい。
2013・11・15記